死後離婚とは? 義実家との関係を解消する方法と注意点

更新:   公開:
  • 遺産を受け取る方
  • 死後離婚
死後離婚とは? 義実家との関係を解消する方法と注意点

夫を亡くしたあと、義理の両親や親族関係に苦しむ方が、法的につながりを解消したいと考えるケースがあります。このような場合に活用できる制度として知られているのが、「死後離婚」という手続きです。

法務省の戸籍統計によると、福岡県内における姻族関係終了届の届出総数は、令和3年は113件、令和4年は128件、令和5年は139件、令和6年は146件となっており、年々増加していることが伺えます。

本コラムでは、死後離婚の概要やメリット・デメリット・手続き方法などについて、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士が解説します。

出典:「法務局及び地方法務局管内別 届出事件数」(法務省)


遺産相続を弁護士に相談 遺産相続を弁護士に相談

1、死後離婚とは

「死後離婚」とは、具体的にどのような制度なのでしょうか。以下では、死後離婚の概要や法律上の位置づけについて解説していきます。

  1. (1)死後離婚の概要

    死後離婚とは、配偶者の死亡後に、義理の家族との姻族関係を終了させる手続きです
    そもそも、婚姻によって生じるのは、配偶者との関係だけではありません。配偶者の両親や兄弟姉妹とも、「姻族」(いんぞく)という法律上の親族関係が生じます。通常、婚姻によって義理の家族との間に生じた姻族関係は、離婚によって解消されます(民法728条1項)が、配偶者の死亡によっては当然には解消されません。

    配偶者が死亡した場合に、姻族関係を終了させるためには、生存配偶者の姻族関係を終了させる意思表示(同条2項)、具体的には、「婚姻関係終了届」を生存配偶者の本籍地又は所在地の市区町村役場に届け出る(戸籍法96条、25条1項)ことで、義理家族との姻族関係終了を終了することができます。


    配偶者が亡くなったとしても、この姻族関係は自動的には消えません。そのため、義実家との法律上の関係を断つ手段として、死後離婚が利用されるケースがあります。

  2. (2)死後離婚は正式な法律用語ではない

    「死後離婚」という言葉は、法律で定められた正式な用語ではありません。あくまで一般的に使われている通称です。

    法律上は、民法に基づく「姻族関係終了の意思表示」という制度があり、そのための届け出が「姻族関係終了届」です。

    配偶者の死後に姻族との関係を終了させる手続きであることから、死後離婚と呼ばれています。亡くなった配偶者と離婚をするわけではなく、「義理の家族との関係を終わらせる手続き」という点が重要です

  3. (3)姻族関係終了届について

    姻族関係終了届とは、配偶者の死亡後に姻族関係を終了させるために提出する届出書です。生存配偶者の本籍地または所在地を管轄する市区町村役場に提出します。

    姻族関係終了届を提出する際は、義理の家族の承諾や家庭裁判所の許可を得る必要はありません。提出した届出書が受理されれば、その日から法律上の姻族関係が終了します

    提出期限も定められていないため、配偶者の死亡から年数が経過していても届け出が可能です。

2、死後離婚を考える理由は?

死後離婚を考える理由は人それぞれですが、精神的・経済的な負担から自分を守るために選択されるケースが多いです。主な理由としては、次のようなものが挙げられます。

  1. (1)配偶者の親族とのしがらみを断ちたい

    死後離婚を考える代表的な理由のひとつは、義理の親族とのしがらみを断ちたいという思いです。

    生前は配偶者が間に入っていた場合でも、亡くなったあとは義理の親族とやり取りをしなければならなくなる場面があります。遺産の扱いや法事・子どもの養育方針などをめぐって対立が生じることにより、精神的な負担が大きくなるケースもあるでしょう。

    姻族関係終了届を提出すれば、法律上の親族関係は終了します。感情の問題がすぐに解決するわけではありませんが、法的な手続きによって心理的な区切りをつけられます。

  2. (2)義両親の介護・扶養をしたくない

    将来的な義両親の介護や扶養の問題を心配して、死後離婚を検討するケースもあります。

    法律上、直系血族や兄弟姉妹には扶養義務(民法877条1項)がありますが、姻族については原則として扶養義務があるわけではありません。しかし、特別な事情がある場合は、家庭裁判所の審判などによって例外的に扶養義務が生じるケースもあります(877条2項)。

    姻族関係を終了させることで、少なくとも法律上の姻族としての立場はなくなります。実際にどこまで扶養義務が問題となるかは個別事情によりますが、将来への不安を整理する手段になり得るでしょう

  3. (3)夫や夫の親と同じ墓に入りたくない

    「夫や夫の親と同じ墓に入りたくない」という問題も、死後離婚を考える理由のひとつです。

    地域や家庭によっては、嫁ぎ先のお墓に入るという慣習が根強く残っているケースがあります。しかし、夫婦関係や義実家との関係が良好でなかった場合、同じ墓に入りたくないと思うのは自然な感情です。

    このような場合は、法律上の姻族関係を終了させることで、将来の供養や埋葬のあり方を自分の意思で選びやすくなります

3、死後離婚のメリット・デメリット

死後離婚には明確なメリットがある一方で、見落とされがちなデメリットも存在します。感情だけで死後離婚を進めてしまうと、あとから「思っていた制度と違った」と後悔する可能性もあるため注意が必要です。

以下では、主なメリットとデメリットを整理して解説します。

  1. (1)死後離婚のメリット

    死後離婚をする主なメリットは、以下のとおりです。

    • 義理の家族との法律上の関係を終了できる
    • 将来的な扶養や介護に関する不安を整理できる
    • 新たな人生設計をしやすくなる


    姻族関係終了届を提出すれば、法律上の姻族関係を終了できます。これにより、将来の義両親の扶養や介護といった責任を過度に背負い込む必要がなくなります

    転居や再婚など、死後離婚後の新たな人生設計をしやすくなる点もメリットです。死後離婚によって法的な関係を整理することで、気持ちの整理もつきやすくなるでしょう。

  2. (2)死後離婚のデメリット

    死後離婚にはメリットだけでなく、以下のようなデメリットもあります。

    • 戸籍に記載される
    • 義実家との関係性が悪化する可能性がある
    • 亡配偶者の相続放棄をする場合は別途手続きする必要がある


    死後離婚をすると、戸籍に姻族関係終了の旨が記載されます。手続きは自分の意思だけで進められますが、配偶者の親族にいずれ気付かれてしまう点はデメリットです

    同意なく関係解消をすることで、義理の家族との感情的な対立が深まる可能性があります。特に子どもがいる場合は、祖父母との交流に影響が出るおそれもあるため慎重な判断が必要です。

    また、死後離婚をしたとしても、亡くなった配偶者の遺産相続や遺族年金には影響しません。したがって、相続人としての権利を放棄する場合には、別途相続放棄の手続きが必要となります

4、死後離婚の手続きと注意点

死後離婚は、「姻族関係終了届」を提出することで成立します。以下では、手続きの流れと必要書類・注意点について確認していきましょう。

  1. (1)死後離婚手続きの流れ

    死後離婚の手続きは、次のような流れで進みます。

    • ①「姻族関係終了届」の用紙を入手する
    • ② 必要事項を記入して提出する
    • ③ 届け出が受理されると姻族関係が終了する


    まずは姻族関係終了届の用紙を入手しましょう。市区町村役場の窓口で直接受け取るか、ホームページからダウンロード・印刷することで入手できます。

    必要事項を記入し署名・押印したら、本籍地または所在地の市区町村役場に提出します。窓口に持参するほか郵送による提出も可能ですが、送付先は市区町村によって異なるため事前に確認するようにしてください。

    姻族関係終了届が受理されれば、その日から姻族関係は終了します。一度受理されると原則として撤回はできません。

  2. (2)手続きに必要な書類

    死後離婚の手続きに必要な書類は、以下のものがあります。

    • 姻族関係終了届
    • 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード・パスポートなど)
    • 印鑑
    • 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)


    郵送で提出する場合は、必要書類や記載方法に不備があると受理されない可能性があるため注意が必要です。不安があるときは事前に窓口に問い合わせて確認しましょう。
    なお、各市区町村によって必要書類は異なりますので、事前にそれぞれの市区町村役場で確認しましょう。

  3. (3)死後離婚の注意点

    死後離婚を検討する際には、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。

    • 原則として撤回できない
    • 子どもの血縁関係は継続する
    • 死後離婚の手続きだけでは名字は変わらない


    一度姻族関係終了届を提出すると、原則として取り消しや撤回はできません。将来的に関係を修復したいと考えた場合でも、法律上の姻族関係を元には戻せないため注意が必要です。

    また、死後離婚によって関係が終了できるのは、亡くなった配偶者の親族と残された配偶者の関係です。死別した配偶者との間に子どもがいる場合、配偶者の親族と子どもの血縁関係は継続します。子どもの氏を変更し自身の新戸籍に入れるには、家庭裁判所へ「子の氏の変更許可」(民法791条1項)を申し立てたうえで、「入籍届」を提出する必要があります(戸籍法98条1項)
    なお、子が15歳未満の場合は、親権者(法定代理人)がとして上記手続きを行えます(民法791条3項)が、子が15歳以上の場合は、子が自身で行うことになります。

    さらに、死後離婚の手続きだけでは名字は変わらないため、婚姻前の名字に戻したい場合は別途「復氏届」の提出が必要です(民法751条1項、戸籍法95条)

まずはお気軽に
お問い合わせください。
電話でのお問い合わせ
【通話無料】平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:00
メールでのお問い合わせ
営業時間外はメールでお問い合わせください。

5、まとめ

死後離婚とは、姻族関係終了届を提出することで、配偶者の死後も続いている義理の家族との法律上の関係を終了させる制度です。

一度姻族関係終了届を提出すると、原則として撤回はできません。手続き自体は役所への届け出のみで完了しますが、自身の今後の生活や子どもへの影響まで含めて慎重に検討する必要があります。

死後離婚による義実家との関係や相続への影響などが気になる場合は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。弁護士を介して事情を整理することで、状況に応じた最適な行動を見極めやすくなるでしょう。

死後離婚や遺産相続手続きでお悩みの方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士にご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
この記事を監修した
福岡オフィスサイトへ