不貞慰謝料の請求期限(時効)は? 民法改正の影響と時効の更新方法
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配偶者の不貞行為は、法的に認められた離婚原因のひとつです。しかし、離婚前にそのことに気づかず、離婚後に元配偶者が婚姻期間中に不倫していたことがわかった場合どうすればいいのでしょうか。
不都合なことに、不貞慰謝料には請求期限(時効)があります。離婚後に婚姻期間中の不倫が発覚したケースや、婚姻期間中に配偶者の過去の不倫を発見するというケースでは「いまからでも慰謝料は取れるのか?」と、不安になる方も少なくありません。
そこで、不貞慰謝料の請求期限や慰謝料請求の方法について、民法改正後の変更点も踏まえながらベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。
1、不貞行為の時効とは?
不貞行為が行われると、被害者である配偶者は、不貞行為という不法行為による精神的苦痛に対する損害賠償として、加害者に不貞慰謝料(不倫慰謝料)を請求することができます。この場合の加害者は、「不貞行為をした配偶者」と「不倫相手」のことで、不貞慰謝料は配偶者にしか請求できない離婚慰謝料とは異なり、不倫相手側にも支払いを求めることが可能です。
加害者への慰謝料請求はいつでもできるわけではありません。一定の期間が経過すると、慰謝料請求権が消滅してしまう「消滅時効」という制度があります。
では、不貞行為に対する慰謝料請求権はどのくらいの期間が経過すると時効になり消滅してしまうのでしょうか?詳しくみていきましょう。
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(1)不貞行為の時効期間
不貞行為に対する慰謝料請求権の消滅時効は、被害者自身が不貞行為の事実と不倫相手を知った時点から3年間、不貞行為が行われた日から20年間です。
なお、「不倫相手を知った」というのは、不倫相手が誰か判明した状態のことを指すため、不倫相手が誰かわからない状態では消滅時効のカウントはされません。
つまり、不貞行為があったときは不倫相手が誰かわからず、その後3年以上経過してから不倫相手のことを知った場合でも、不貞行為から20年以内であれば慰謝料請求権は消滅していないため、不倫慰謝料請求が可能です。
これに対して、配偶者に不貞行為に基づく慰謝料請求をする場合には、婚姻中は時効が完成せず、離婚成立から6ヶ月経過するまで時効が延長されます(民法159条)ので、配偶者の不貞を知った時点から3年以上経過したとしても、まだ離婚していなければ請求できるでしょう。 -
(2)民法改正による変更点|時効をリセット・中断できるように
2020年4月1日の民法改正によって、「不法行為の時から20年間」という除斥期間が廃止され、消滅時効に統一されました。
「除斥期間」は原則として時効の更新や完成猶予ができないため、改正前は不貞行為があった時から20年が経過すると自動的に請求権が消滅してしまっていましたが、「消滅時効」に変更されたことで、時効の更新や完成猶予ができるようになったのです。
「時効の更新」とは時効がリセットされることを意味しています。つまり、時効が更新されると新たにその時点から時効が進行するということです。
そして「時効の完成猶予」とは時効が中断することを指し、一定期間時効の進行をストップさせることを意味します。次で詳しく解説しますが、時効の完成猶予の方法として、改正後「協議を行う旨の合意を書面にする」という方法が新たに加わったのも変更点のひとつです。
2、時効を更新・完成猶予する方法
時効が成立してしまうと慰謝料を請求することができなくなってしまいます。時効が間近に迫っている場合は、時効の期限を遅らせる制度を利用しましょう。
慰謝料請求を消滅させないために時効を更新・完成猶予する方法について説明していきます。
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(1)内容証明郵便を送付する
1つ目の方法は「内容証明郵便の送付」です。内容証明郵便は日本郵便のサービスで、発送日や文書の内容、差出人・受取人などについて郵便局が証明してくれます。
相手に慰謝料を請求する意思表示をすることを「催告」といいますが、内容証明郵便で催告することで、時効の成立を6か月間猶予することが可能です。
ただし、内容証明郵便の送付はあくまでも「完成猶予」にとどまるため、時効を更新するためには「訴訟」を提起しなければなりません。
また、催告は繰り返し行うことができない点にも注意が必要です。
したがって、慰謝料を請求する内容の内容証明郵便が相手方に到達した後、訴訟提起せずに6か月が経過してしまうとその完成猶予はなかったこととなり、その6か月が経過した際に時効が完成してしまっていると、相手方に慰謝料請求をすることができなくなってしまいます。 -
(2)裁判を起こす
不貞慰謝料請求の裁判を起こす(訴訟を提起する)ことで、判決が出るまで時効完成が猶予されます。
そして裁判が決着し、判決確定または和解成立した場合はその時点から10年間時効が更新され、慰謝料の請求権が有効となります(民法169条)。この期間内であれば、相手が支払いをしない場合でも、強制執行(差し押えなど)を行うことが可能です。 -
(3)不倫相手に慰謝料を払う意思を示させる
加害者が慰謝料を払う義務を認める行為を「債務承認」といいます。
加害者が「債務承認」をした場合も時効の完成が猶予されるため、不倫相手に慰謝料を支払う意思を示させるという方法も有効です。
ただし、後になって「言った・言わない」の水掛け論にならないよう、合意書を作成しておきましょう。 -
(4)協議を行うことの合意を書面にする
民法改正後、不貞行為に対する慰謝料請求について協議を行うという内容の合意を取り、書面または電磁記録にすることで時効の完成が猶予されるようになりました。
時効の完成猶予期間は、以下のいずれかで一番短い期間になります。- 合意があったときから1年
- 合意において当事者間で決めた協議を行う期間(1年に満たないものに限られる)
- 当事者の一方が相手に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面されたときから6か月
上記の期間でも協議がまとまらない場合は、再び協議するということに合意できれば、最長5年までは時効の完成が猶予されます。
3、慰謝料請求する流れ
不貞慰謝料を請求するためにはいくつかのステップを踏む必要があります。証拠収集から裁判まで、慰謝料請求の具体的な流れをみていきましょう。
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(1)不倫の証拠を収集する
加害者に慰謝料を請求する前に、まずは不倫の証拠を収集することが大切です。もし証拠がない状態で慰謝料を請求すると、相手に「不倫はしていないから払わない」と拒否されてしまう可能性があります。また、裁判になった場合も証拠が重視されるため、以下のような証拠を集めましょう。
【不貞行為を示す有効な証拠】
- 性交渉や裸体の写真、動画
- 不貞行為を認める念書や録音のデータ
- 配偶者と不倫相手とのメールやSNS上のやり取り
- 不倫相手との通話履歴
- ホテルの領収書や不倫相手へのプレゼント代などのクレジットカード明細書
- 興信所や探偵事務所からの報告書
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(2)慰謝料請求額を決定し、内容証明郵便を送付する
証拠を収集したら慰謝料請求額を決定して、内容証明郵便を送付しましょう。
不貞行為の慰謝料請求の相場は、は約50〜100万円が一般的です。
ただし、不貞行為の悪質性が認められる場合等、不貞行為の内容や状況、証拠の有無などによっても変動するため、適正な慰謝料の算定は弁護士に相談することをおすすめします。 -
(3)相手と交渉する
不貞を原因とする慰謝料の支払いについて、相手と交渉していきます。
証拠を提示しながら慰謝料を請求しましょう。
加害者本人と直接やりとりすることが苦痛な場合は、弁護士などに代理人として交渉してもらいましょう。 -
(4)示談書を作成する
交渉がまとまったら示談書を作成します。一般的な契約書でも問題はありませんが、できれば「公正証書」にすることがおすすめです。
私文書である契約書に対して「公正証書」は公文書であり、証拠能力が高いためトラブルを未然に防ぐことができるという特徴があります。また、「強制執行認諾文言」という、「加害者(慰謝料支払い義務者)は慰謝料の支払いが滞った場合は直ちに強制執行を受けることを認諾している」という文言を公正証書(強制執行認諾文言付公正証書)に入れておけば、裁判を起こさずに相手の財産を差し押さえることも可能です。
したがって、合意内容は後のトラブル防止のためにも公正証書にしておきましょう。 -
(5)交渉がまとまらない場合は裁判を提起する
交渉がまとまらない場合、裁判を提起します。
配偶者へ離婚とともに慰謝料を請求する場合は裁判の前に「離婚調停」を行う必要がありますが、不倫相手に慰謝料を請求する場合は調停を行う必要はありません。
交渉が決裂した以上、裁判を提起して裁判官に慰謝料請求を認めてもらえるように自らの主張や不貞行為の事実の立証を行いましょう。このとき、最初に集めておいた証拠が役に立ちます。逆にいえば証拠がない場合、裁判官に不貞行為の事実を認めてもらえず慰謝料請求が認められない可能性が高くなるため、しっかりと証拠を集めておきましょう。
4、慰謝料請求を検討している場合は弁護士に相談を
不貞慰謝料請求を検討している場合、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すると、不貞行為の慰謝料請求の大切なポイントである「証拠の収集」についてアドバイスを受けることが可能です。
また、弁護士が代わりに相手との交渉を行うことで、交渉が有利に進められるというメリットもあります。
さらに、弁護士に依頼することで、加害者である相手との交渉や裁判手続きを任せることができるため、慰謝料請求で揉めた場合にかかる精神的な負担を軽減できるというメリットもあるのです。
対応を迷っている間に時効が成立してしまうことを防ぐためにも、早めに弁護士に相談しましょう。
5、まとめ
不貞慰謝料の請求には、「配偶者が知ってから3年」または「不貞行為が行われてから20年」の時効があり、2020年4月1日の民法改正により時効の完成猶予や請求権について明確化されました。
慰謝料請求を検討している場合は、悩んでいる間に時効が成立してしまうことを防ぐためにも早めに弁護士に相談しましょう。
そのときはぜひベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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