無理心中を図ったときに問われる罪や刑罰は?
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無理心中は法律上の正式な用語ではなく、行為の内容によっては殺人罪などに問われます。
長野県内においては、令和6年の凶悪犯検挙数は101件で、そのうち「殺人」に該当するものは9件でした。
本コラムでは、無理心中はどんな罪や刑罰が適用されうるのかなどについて、ベリーベスト法律事務所 長野オフィスの弁護士が解説します。
出典:「長野県内の刑法犯認知・検挙状況」(長野県警察)、「刑法犯に関する統計資料」(警察庁)
1、「無理心中」とは? どのような罪になるのか?
まずは、そもそも「無理心中」とはどのような意味なのかを確認しましょう。
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(1)無理心中の意味
一般的に「心中」とは、家族などの親しい関係の数名が合意して、共に命を絶つことを指します。相手の合意なく行われた場合を「無理心中」といいます。つまり、加害者が他者の殺害と自殺を同時に図る行為が無理心中です。
ただし、「無理心中」という言葉は、刑法上の正式な用語ではありません。新聞やテレビなどでは頻繁に使われますが、報道で無理心中と表現されていても、一概に同じ罪に問われるわけではないのです。どのような罪となるのかは、個別の事情によって大きく異なります。 -
(2)当事者の意思や行為によって罪が変わる
無理心中は法律用語ではないため、無理心中罪という罪名もありません。
では、どのような罪が適用されるのかというと、殺人罪や自殺関与罪などが適用される可能性があります。誰が、どのような意思で、どのような行為をしたかによって、どの罪が問われるのかは異なります。
無理心中事件で、罪を決める際に重要視されるのは、次のようなことです。- 被害者側に自由な意思はあったのか
- 生存者は関与していたのか
- 死亡した方は合意や依頼をしていなかったか
たとえば、相手が明確に拒否していたにもかかわらず殺害したとなると、通常の殺人罪に問われる可能性が高いでしょう。一方で、相手が自ら死を望み、その意思に基づいて手助けをした場合には、自殺関与罪や同意殺人罪が検討されます。
「一緒に死のうと思った」という加害者の主観的な動機だけではなく、「客観的に被害者がどんな意思をもっていたのか」や「実際に加害者がどのような行為をしたのか」が、罪名を左右します。
2、無理心中で問われうる罪と刑罰
ここからは、無理心中で問われうる罪と刑罰について具体的に解説します。無理心中で問われうる主な罪には、殺人罪・殺人未遂罪・自殺関与罪・同意殺人罪・承諾殺人罪があります。
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(1)殺人罪
相手の同意がなく無理心中を行った場合はもちろん、同意していたとしても強要や精神的支配の結果であった場合には、刑法199条の殺人罪が成立する可能性があります。
殺人罪は、人を殺す意思(殺意)をもって生命を奪った場合に成立しうる罪です。
とくに子どもや高齢者などの意思表示が十分にできない立場の被害者が含まれる無理心中事件では、殺人罪に問われる可能性が高まるでしょう。法定刑 死刑・無期拘禁刑・5年以上の有期拘禁刑のいずれか -
(2)殺人未遂
相手を殺害しようとしたものの、結果として死亡に至らなかった場合は、殺人未遂罪が成立する可能性があります。つまり、無理心中事件で生存者がいる場合は、殺人未遂罪に該当するかどうかが争われるでしょう。
たとえ被害者が負傷していなかったとしても、殺意をもってした行為があれば、殺人未遂罪が適用される可能性があります。法定刑 殺人罪の法定刑(死刑・無期拘禁刑・5年以上の有期拘禁刑のいずれか)から未遂犯として刑が減軽される -
(3)自殺関与罪
無理心中と報道される事件の中には、自殺関与罪として立件されるケースも存在します。自殺関与罪には、自殺ほう助罪と自殺教唆罪があります。
自殺ほう助罪が適用されるのは、相手が自ら命を絶つことを決意しておりそれを手伝った場合です。一方で、自殺教唆罪が適用されるのは、相手をそそのかして自殺を決意させた場合です。
つまり、相手が望んでいたからといって、無理心中を行った方の刑事責任が免除されるわけではありません。法定刑 6か月以上7年以下の拘禁刑 -
(4)同意殺人罪・承諾殺人罪
相手から「殺してほしい」という明確な承諾を受けたうえで殺害した場合には、刑法202条後段の同意殺人罪のうち承諾殺人罪が成立する可能性があります。
ただし、承諾が真に自由な意思に基づくものであったか、つまり、精神的に追い詰められた状況での意思表示ではなかったかなどが厳しく判断されるのが通常です。明確な承諾だと認められなければ、殺人罪として扱われる可能性があります。法定刑 6か月以上7年以下の拘禁刑
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3、実際に起きた無理心中の判例
無理心中を図って生き残った場合、加害者として罪に問われる可能性があります。どのようなケースがあるのか、実際に起こった事件の判例について、概要や言い渡された刑罰を見てみましょう。
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(1)妄想性障害が争点となった無理心中事件
妄想性障害を発症した状態で、被告人が祖母・姉・母を殺害し、父も殺害しようとして未遂に終わった事件があります。
被告人は、勤務先でのいじめ被害を妄想的に確信するようになり、さらに「その被害が家族にも及んでいる」との妄想を強め、強い苦痛や絶望感のもとで、家族を巻き込んで無理心中を図ったと整理されています。
一審は、妄想性障害の存在は認めつつも、犯行には一定の計画性や違法性の認識があり、妄想が犯行に与えた影響は限定的として、完全責任能力を認めました。
しかし、控訴審で精神科医による新たな鑑定が行われ、妄想による苦痛や焦燥が意思決定に大きく影響し、判断力や行動制御能力が著しく減退していたとして心神耗弱が認定され、懲役25年を言い渡しました。(令和元年5月20日東京高等裁判所) -
(2)引きこもり・介護・生活破綻の末に起きた無理心中事件
約20年の引きこもり生活を続けていた被告人が、同居する両親を自宅で殺害した事件では、懲役16年の実刑判決が言い渡されています。
被告人は、若年期からの外見上のコンプレックスをきっかけに強い対人不安を抱き、社会との接点を断ったまま中年期を迎えていました。その間、母は病気で寝たきりとなり、父は仕事を辞めて介護に専念し、家計は破綻寸前だったようです。
母が「死ねるものなら死にたい」と書いたノートを見た被告人は、三人で死ぬしかないと考え、無理心中を決意しました。ネクタイやロープで父母を相次いで絞殺し、その後自殺を図ったものの失敗し、自首しています。
裁判では、長年の引きこもり・介護・経済的困窮などが考慮されましたが、両親に心中の同意はなく、強固な殺意に基づく計画的犯行であるとして殺人罪が成立しました。
裁判所は、同情の余地はあるとしつつも、結果の重大性や犯行態様の悪質性を重視し、懲役16年を言い渡しました。(平成17年4月25日大阪地方裁判所)
4、刑事事件の当事者になってしまったら弁護士に相談を
自分はもちろん、家族・友人・知人などが刑事事件の当事者になってしまったら、どうすればよいのでしょうか。とくに大切なのは、早期に弁護士に相談することです。弁護士に相談すべき主な理由は次の通りです。
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(1)逮捕を回避するための弁護活動が依頼できる
無理心中事件は、感情的な背景が強い事件です。そのため、捜査機関も慎重に事実関係を調べます。入念な捜査のために、逮捕や勾留といった身柄拘束が行われる可能性も否定できません。
弁護士に早期に相談すれば、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを具体的に主張し、逮捕を回避して在宅捜査となるよう弁護活動を任せることができます。
また、もし逮捕されても早期釈放のための弁護活動が可能です。 -
(2)厳しい刑罰を回避するための弁護活動が依頼できる
無理心中事件は、殺意の有無・同意の程度・精神状態など、評価次第で適用される罪名が大きく変わるのが特徴です。起訴内容や量刑に大きな差が生じることもあり、今後の人生に与える影響は計り知れません。
弁護士は、生活状況・事件前後の経緯・医学的資料を整理し、より軽い罪名や量刑が相当であることを主張します。適切な弁護活動を受けることによって、厳しい刑罰を回避できる可能性が高まります。
お問い合わせください。
5、まとめ
無理心中の事件では、被害者の同意や自由な意思があったかや、当事者の精神状態や行為の内容など、個別の事情をもとに慎重に判断されたうえで殺人罪や自殺関与罪などが適用されます。
もしも身近な方が無理心中と報じられる事件の当事者になってしまった場合は、早い段階で弁護士に相談し、事実関係や状況を適切に整理することが重要です。弁護士のサポートを受けることで、身柄拘束の回避や過度に重い刑罰を防げる可能性があります。
長野県で、身近な方が無理心中事件にかかわってしまった場合などは、いつでもベリーベスト法律事務所 長野オフィスへ、ご相談ください。刑事事件の実績が豊富な弁護士が速やかにサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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